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Take action with ふくしまでは、2018年1月6日から1泊2日の日程で第5回アンバサダーミーティングとして、福島浜通りツアーを開催しましたので、前回に引き続き2日目の模様を報告いたします。

 

  1. 浜通りツアーの概要
  2. 浜通りツアーの様子(2日目)
  3. 今後のスケジュール 

 

1.視察ツアーの概要

■日程:2018年1月6日(土)〜7日(日)

■視察スケジュール:

1月6日(土)

09:00 東京駅集合、ガイド押田一秀さん合流

 車内セミナー①自己紹介、震災、放射線の基礎知識

12:00 「木戸の交民家」到着、昼食

13:00 出発、途中旧警戒区域の視察

 車内セミナー②原発被災地の産業事情

 車内セミナー③原発事故と廃炉作業状況(ゲスト:AFW吉川彰浩さん)

 車内セミナー④原発被災地での生活(ゲスト:浪江町町民の小林奈保子さん)

15:45 南相馬市小高区「小高ワーカーズベース」到着

 実地セミナー⑤旧警戒区域での創業(ゲスト:小高ワーカーズベース和田智行さん)
17:00 出発

17:40 南相馬市鹿島区「農家民宿いちばん星」到着、チェックイン

 夕食、アンバサダーMTG

21:30 初日終了

 

1月7日(日)

08:30 チェックアウト、出発

09:00 浪江町「まち・なみ・まるしぇ

 実地セミナー⑥避難住民の今(ゲスト:避難住民の皆さま)

10:30 出発

 車内セミナー⑦若者の活躍を知る

12:00 いわき市「いわき・ら・ら・ミュウ」到着、昼食

 高校生/大学生プロジェクト発表⑧地域で活動する若者

 アンバサダーMTG、発表

17:00 出発

20:00 東京駅着、解散

 

 

2.浜通りツアーの様子(2日目)

1月7日、ゆうべのお酒を引きずることなく(?)朝から元気に朝食を食べて、「農家民宿いちばん星」をチェックアウト。

 

午前中は、浪江町役場のお隣にある「まち・なみ・まるしぇ」からスタートです。

 

ここの食堂「キッチン・グランマ」で出迎えてくださったのは、浪江町民の渡邊りえ子さんと小松康二さんです。

このおふたりから、避難生活のこと、その後の生活の変化など、リアルな実体験を話していただきました。

 

渡邊りえ子さんは、東京ご出身のとてもパワフルな女性。とても丁寧にわかりやすく、これまでの経緯をお話ししてくださいました。

震災前は人材派遣業や建設業を経営されていましたが、雇用していた従業員の大半が若い女性で、原発の影響を懸念する声が大きかったこともあり事実上の解散。2年間は会津若松に暮らしていたそうですが、もともと浪江町が大好きだったこと、いずれは農業をやりたいと土地を準備をしていたこともあって、南相馬市の仮設住宅に戻ってきました。その後、「まち・なみ・まるしぇ」ができた際にお店の開業を持ちかけれらたそうです。飲食店のご経験はなかったそうですが、比較的自由な身の上だったことや経営の経験を生かし、60歳以上の女性を集めて「キッチン・グランマ」を立ち上げました。始めてみれば、温かいご飯や、野菜が食べられるという声に支えられ、多くの課題を抱えつつも楽しく運営をされているそうです。

 

小松康二さんは、本来は見学のみでお話される予定はなかったそうですが、話題を向けると、とても力強く饒舌に、今の想いを話してくださいました。

 

仮設住宅でイベントを行ったり、町づくりへ助言を行うなど、復興に欠かせない住民代表になっています。

とても印象的だったのは、ご本人が不便な生活を強いられた避難民でありながら、過剰な補償を求めず、復興予算にメリハリをつけ、必要なところに必要なだけの補償がされるよう強く主張されていたことです。例えば、避難住民は高速道路が無料になりますが、避難生活とは関係ないレジャーでの利用でも無料になってしまうのはやめ、直接的なものに絞るべき、避難住民は、家を全国どこに建てても補填してもらえるが、元の土地に建てる場合を優先すべき、など、行政や東電の立場も鑑み、理解を示しつつも、客観的且つ合理的な意見を主張されていました。また、現在町に通ってきている1日3000〜5000人の原発に従事する方々が町に定住することで、町の人口を増やし、復興で栄える町にしようという新たな提案もされていました。そして何より「若い人が増えなければ町の未来はない!」という切実な言葉に力がこもっていました。

通常は、住民サイドからは「被害者」としての主張が声高に叫ばれがちですが、それでは議論が平行線になりがちです。小松さんのように、前向きに次のフェーズへ進もうとする方々の力強い意見は聞いていて心地よく、こちらがパワーをもらうようでした。

 

おふたりと別れたら、立て続けにバスの中で押田さんによるセミナーです。

キッチングランドマザーでご用意いただいたお弁当を食べながら。なぜなら「ドSなツアー」だから(笑)

 

ここでの押田さんのお話は、主に「産業」がテーマ。

まず、震災前と震災後で、どのような産業構造の変化があったのか説明をしていただきました。

例えば震災後、福島県の水産業は震災前の20%に落ち込みました。今は試験操業が再開されているものの、もともと高齢化していたことや補助金や賠償金が支払われている影響で、復帰しない事業者も多く大きな回復は見込めていません。また、水産業の激減に伴い、それに付随していた加工業も震災前に比べて大幅に減少しています。同様に、林業や農業など、特に1次産業を中心に震災後より落ち込んでいます。一方で、復興に付随する建設業や、企業誘致に力を入れている製造業は伸びているのですが、押田さんの言葉を借りれば「仕事にはプライドがある」ので、漁業や農業にプライドを持っていた地元の人々が、伸びているからといって簡単に建設業や製造業に鞍替えしたりはしない、という実情が伺えます。このような産業構造の歪みを発生してしまった状況に対し、地元の人たちだけの従来の発想で解決できることには限りがあります。他地域の人、いわゆる「ヨソモノ」を増やし、「交流人口」を増やすことが重要になりそうです。

そんな中、相双地域(相馬、双葉町地区)は起業数が県内1位になりました。しかもその要因はなんと「塾」「資格ビジネス」などの学習系。従来は学歴に関係なく、家業の漁業や農業を継げば安定した収入が期待できましたが、それが期待できなくなった今、進学の重要性が高まり、塾や予備校のニーズが高まったことが推測されます。このような実業を踏まえると、産業構造の変化によって新たなビジネスチャンスが生まれていて、しかも補助金などの制度、ニュース性をうまく活用すれば、ベンチャーの創業には通常よりも有利な条件が揃っているとも言えるのです。

前日の和田さんのお話と、この押田さんのお話、一方で生活者でもある小林さんや渡邊さん、小松さんの話を踏まえると、もちろん決して簡単なことではありませんが、どんな産業が求められ、どんなことに気をつければいいか、ということが見えてきそうです。参加者の皆さんにも「何かactionする」ことが、少し現実的になったのではないでしょうか。

 

 そうして1時間ほど走って、バスは最後の目的地、いわき市の観光物産館「いわき・ら・ら・ミュウ」に到着。

午後は、ここの研修室を使って、地元の学生達の活動を学び、最後のミーティングをします。

 

参加してくれた学生は、こちらの4名。主に福島大学や早稲田大学の学生達です。

 

福島大学3年の牧内美樹さん。富岡町の出身で、被災経験をバネに、大好きな福島の魅力を発信する旅行ツアーを企画する活動をしています。 

 

福島大学3年の上石美咲さん。高校生の時に新聞社に直接売り込んで連載記事を書いたことがあるというツワモノ。ミスピーチキャンペーンクルーをやっていた時、福島県産の桃をPR中、試食した女性が福島産とわかった途端、目の前で吐き出されるという衝撃的な経験をし、「伝える」ということをさらに重視し、ふくしまFMでのパーソナリティも務めています。

 

福島大学4年の木村元哉さん。広野町出身。学生団体リプラボを立ち上げ、原発事故を正しく発信し、原発の視察ツアーなども行っています。

 

早稲田大学1年の半田竜樹さん。高校時代から南相馬市小高地区の再生に取り組み、VR映画を活用した映画館「朝日座」の活性化を目指しています。

 

4人とも強い当事者意識と高い行動力で、福島をなんとかしたい、と活動されています。そこには学生ならではの「怖いもの知らず」の精神がうまく生きていて、社会人経験豊富な参加者には大いに刺激になったようでした。

 

4人の成果発表を聞いたあとは、最初のワークショップです。4人それぞれがブースに分かれ、ツアー参加者が興味を持った人のところへ集まり、彼らの持つ課題について一緒に考えたりアドバイスを送ったりしました。

牧内さんは、活動の中で感じている、資金、集客、ツアーのクオリティ向上といった課題を相談。スポンサー獲得を目指してみては?他県や企業の旅行商品の研究もしてみては?などアドバイスが飛び、終始熱心にメモを取りながら頷いていました。

 

上石さんは、せっかくいろいろな経験をもつ参加者に会えるのだからと、あえて自分のことを相談するのではなく、参加者の福島への想いをヒアリングする場にしていました。

 

映画製作を行うと発表した半田さん(右)には、本業が映画プロデューサー(!)という参加者(左)。収益の仕組みづくりなど、プロならではの厳しいアドバイスもあったようです。

 

エネルギッシュな木村さんは、終始参加者全員とコミュニケーションをとりながら、リプラボの課題を相談していたようです。

 

続いてのワークショップは、参加者全員が「私がTake action withふくしまするために今話したいこと」を掲げ、親和性の高い人同士で集まって話し合う、というものです。似たテーマで集まるもよし、他人のテーマを見て自分のものより魅力的だと感じたら合流するもよし。

 

 

 

 結果として大きく3つのグループに分かれました。

 

 

 

1時間程度のディスカッションのあと、それぞれ話し合ったことを発表します。

1つ目のグループのテーマは、「福島に人を呼び込むにはどうしたらいいか」。

昨日からのツアーを通して、やはり「百聞は一見にしかず」を実感したこと、また、このグループのメンバーは、職業が映画プロデューサー、新聞記者、行政の復興支援担当、また、フランスと強いリレーションを持っている方など、「発信」や「海外」に意識の高い方々ならではのテーマになりました。そのためには情報の「伝え方」と「内容」が大切。伝え方としては、映像の力を借りる、事実を流す、復興が進んでいる様子を定点観測して出す、などの方法が出ました。一方、伝える内容としては、特に海外から魅力と映るもの「雪」「温泉」「日本酒」や最近話題になっている二本松市のドリフト専門サーキット「エビスサーキット」などを自信を持って発信することが確認されました。

 

二つ目のグループのテーマは「人をどうむすぶか」です。

漠然としたテーマですが、福島に関心を持つ多くの人をいかに結びつけ、支援に参加してもらうか、ということがテーマです。参加者のひとりが「むすぶ」をコンセプトに事業をしていることと、また、福島に魅力を感じる人の多くから出てくるのが「福島は人が温かい」という言葉。やはりどんなビジネスモデルよりも資金よりも、復興に必要なのは「人の力」なのだと実感したからこそのテーマだと思います。発表では、「楽しく関われる」「楽しいから続けられる」ということが重要だとされました。復興に携わることで仲間ができること、自分が変わったと実感すること、そして、前日の和田さんの話で印象的だった「課題先進地域」ととらえることが原発事故を暗く重いこととしてだけでなく、希望的なことととしてとらえるのに役立つとのことでした。

 

3つ目のチームのテーマはあえてそれぞれが持ち寄ったテーマをまとめず4つのテーマを設定しました。

・復興(幸)って何?

・福島の社会課題解決への関わりを社会的にイケてるactionにする方法

・来る人も迎える人も続けたいと迎える交流の形

・福島の誇れる文化について

ここでもやはり情報が共通項でした。SNSの活用、ビジネススクールなど知見が高い人達のグループへの発信など、そして「美味しい物」は偉大、ということのようです。

 

全体を通して約4時間のワークショップで、前日からのツアーを通して感じたことを、しっかりと吐き出すことができたのではないでしょうか。

 

最後に押田さんからは、2日間の御礼と、ぜひ自分の言葉で福島を語れるようになっていただきたい、という言葉をいただきました。

 

また、主催者を代表して福島県広報課の久保川さんからツアー参加の御礼を申し上げ、「ふくしまマップ」の経緯をお話しました。

 

ふくしまマップは、県の広報誌を作ろうと福島県出身のクリエイター箭内道彦さんに相談した際に、「クソおしゃれなやつを作ろう」と話し合い、イラストレーターの寄藤文平さんに(無料で!)依頼、出来上がったものをクリエイターが集まるカフェのオーナーがあちこちに見せてくださり、池袋の大型書店「ジュンク堂」のバイヤーの目に止まりこれをメインにした福島県特集を店頭でやりたいと発展、さらにそれを見たセレクトショップ「BEAMS」のバイヤーが福島県特集を…と発展した経緯があったそうです。(ジュンク堂、BEAMSの件は、改めてTake action withふくしまでもご報告します)

ひとつの小さな石が、身近な人に繋がり、巡り巡って大きな動きに展開していくこともあります。

参加者の皆さんは必ずしも豊富な人脈や発信力を持っているわけではないかもしれませんが、家に帰ってご家族に、会社に行って同僚に、この2日間の出来事をお話するだけでも県民にとっては大きな貢献です。ぜひまずは身近なところから、小さな一方から、初めていただきたいと感じました。

 

そしてツアー最後の集合写真。

 

2日間、たくさんの情報をインプットし、感じることや考えることがあり過ぎて、頭がパンクしそうになりながらも、皆さんしっかりと「自分なら、自分たちなら何ができそうか?」を考えてくださいました。帰りのバスでも「まずは仲間を集めてツアーを開催をしたい」「自分のfacebookで長いレポートを書く」といった具体的な行動も聞かれ、これからの展開が楽しみになりました。

 

その後のアンケートでも、全員が「非常に満足」と評価していただき、「有意義でした」「刺激を受けました」「インプットもアウトプットもできてよかった」と言った声がたくさんありました。またこのようなツアーを開催できたらいいな、と思います。本当におつかれさまでした!

 

3.今後の予定

今後は、

・2月下旬 第6回アンバサダーMTG@都内

・3月下旬 最終回アンバサダーMTG 成果発表会@都内

を予定しています。随時お知らせしていきます。

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