• このエントリーをはてなブックマークに追加

カフェ勤めの主婦から一転。  着物リメイク師として、人と人をつなぎ、着物を世界に発信する。  (株式会社Rin 代表・デザイナー 鈴木 ひろみさん)

株式会社Rin 代表・デザイナー

鈴木 ひろみ

1968年6月2日生まれ。福島県いわき市出身。3人の子供を育て上げた後、株式会社Rinを設立。関わった一人一人が「凛」として前へ進み、繋がって一つの大きな「輪」になるように願いを込めてつけられた「Rin」。ひろみさんは、着物リメイクを通し、たくさんの人の心を繋いで、「輪」を実現している。

 

【目次】

Episode 1
服も縫えない私が着物リメイクを始めて

デニムのスカートを見たことがきっかけで、「人の気持ちに残る服が作りたい」と思うように。けれど、実際に服は作れない、ミシンの糸通しもできない…。そんな中、ある考えを思いつく。

 

Episode 2
母として、着物リメイクRinと子育て

もう育てるっていうのは終わったので、今度は見せる。「面白いことやるとね、こんなんだよ」って。

 

Episode 3
着物は扱っていて、飽きない

着物に対する思いが一人ひとり違う。同じ着物なのに、柄の取り方でぜんぜん違うものみたいになる。だから、はまればはまるほど面白い。

 


 

服も縫えない私が着物リメイクを始めて

この事業を始めたきっかけ…… まず……友達と買い物に行ったんです。そしたら、2万1千円のデニムのスカートがあったんです。「高いな……。」と思って、そのまま買わずに行きました。でも、そのデニムのスカートがずーーーっと頭から離れないんです。仕事をしてても、何をしてても、「ああ、あのデニムのスカートを履いて、上に何かを着て、どこどこに行きたい。」とか。考えてるだけでワクワクしてきたんです。その時に、「ああなんか、人の気持ちに残る服が作りたい」って思ったんです。でも、実際服は作れません、ミシンの糸通しもできません。「じゃあ、そういう技術もなにもない私が、人に伝えられるものって何だろうな」って思って。

人間って不得意なことをやるっていうことほど、苦痛なものないじゃない? 自分の好きなことならば、なんぼでも勉強するし、やるのも楽しいし、寝ないで仕事もしようが何しようが、絶対それは楽しいって思ったんです。だから敢えてあたしは、「苦手なことはしない。その代わり、自分のできることは120%の力を出してやろう」と思ったんです。「私は作れない。じゃあ、作るのが大好きっていう人を探そう」って思ったんです。もうそこから、もう毎日歩きましたね。手芸屋さん行ったりとか、なにかイベントあるって言えばそこに行って。それでだんだんだんだんいろんな人を。本当にひとりひとり増えていって…。

 

 

多分私がRinの一番のファンなんです。

インタビューに応える鈴木さん

私ここの経営者でもあるんですけど、多分私が一番のファンなんです、Rinの一番のファンなんです。縫製さんみんなにお願いするときに、要は見本ってものがないんですよね。「ここをこういう風にして」じゃなくて、私の頭の中の想像の洋服、形も何もなくて、ただ私の頭の中に浮かんだものを説明して、作ってもらうわけなんですよね。そうすると、出来上がった時の感動って、多分私お客さんと同じなんだと思うんですよ。「わぁ~! すごいね!」って。自分で作るわけじゃないから、お客さんと同じ感動なんですよね。それが毎回なんです。

だから本当に楽しいです。だって想像を形にしてくれるんだもん、みんなが。だからすごい。それでその心に残る洋服っていうのが、まずはダイレクトに自分が感じられる。だから私がこの「わぁ~!」って思ったのを、同じくお客さんに伝えたいと思ってる。

で、面白いことに、作ってる縫製さんってみんな、その私の喜ぶ顔を見るのが一番嬉しいんだって。私はお客さんに売るから、お客さんの顔が見れます。でも、縫製さんはお客さんの顔が見えないから、私に着せるっていうイメージで作るんです。「ひろみさんだったらこれをどういう風に着るんだろう」とか「ひろみさんは喜んでくれるかな」っていう思いで作っているんです。

私の後ろには私だけじゃなくてね、縫製さんっていう後ろ盾がいるから、本当にそれを伝えたいです。「こうやって作ってるんですよ」と。ひとつの商品といえばそれまでなんだけれども、普通の商品と違う多様性、ばぁーっと作ってだれが作っているのかわからない商品と違って、確実に私の後ろには皆がいるから、それをみんなが言うのではなくてその代表として、買っているお客さん皆に伝えられたら…… それ込みの商品の魅力なんで。デザインだけじゃなくて。

 

 

母として、着物リメイクRinと子育て
もう育てるっていうのは終わったので、今度は見せる。「面白いことやるとね、こんなんだよ」って。〜

インキュベーションマネージャーの阿部さんと

[インキュベーションマネージャーの阿部さんと。2人は、阿部さんがマネージャーの資格を取った当時からの長い付き合いである。] 

もうとりあえずお母さんとしてやれることは一区切り終わったので、普通の仕事をして、普通にやってるお母さんじゃなくて、好きなことやって、楽しそうにしてるお母さんを見せたほうがいいかなぁって。もう育てるっていうのは終わったので、今度は「見せる」。「面白いことやるとね、こんなんだよ」って。それを今度は、親として体験して、見せるのかなぁって思ったので。

 

Rinを通して、子育て中のお母さんをサポートする

今の子供の虐待とかあるでしょ? あれは、どの親にもあり得ることだと思う、どのお母さんにも。やっぱお母さんってすんごいストレスがたまるの。だって、私だって子ども育ててるときに、すんごいストレスが溜まって、当たり所って子どもしかいないから、どうしても子どもに怒るの。でも、怒った後に思うの、「なんでこんなに怒っちゃったのかなぁ」って。それでたぶん、他のお母さんは終わりなのかもしれないけれど、私は子供に謝った。「いまママはパパとけんかしててイライラしてた。だからそれを、娘のほうにあたっちゃった、ごめんね」って。で、ぎゅってして。でそれで仲直り。それを続けてきて。

でもそれができないお母さんもいっぱいいると思うのね。だから、今うちのスタッフの人たちってみんな子育て中のお母さん。「なんで子育て中のお母さんか?」っていうと、子どもが小さいと外に働きにいけない、働きにいけないから金銭的にも余裕がない、そうするとそういうのもストレスで子どもにあたっちゃう時がある。でも、作るのが好きな人って、作るのがストレス発散になる。家の中で子どもがいないときに、ちょっとやって、1万でも2万でも自分の好きなものを買える余裕があると、それだけで気持ちに余裕ができるし。なので、作ってるみんなが「楽しい!」って言ってくれるのが私は一番嬉しいかな。

Rinでリメイクされた小物

[Rinでリメイクされた小物。さまざまな種類があり、どれも縫製の方が心を込めて作った手作りのものである。]

このRinの土台がしっかりして、もっと自分に力がついてきたら、本当に今度はみんなの子育てがね、縫製さんのも一段落して、「今度は外に出て働く」っていう場があればいいなと思うので、まぁできれば縫製工場まで作れたらいいなって。そうすると、「作るのが楽しい!」というお母さんたちのコミュニケーションの場にもなるし、子どもたちが似たぐらいの歳だと、「ちょっと聞いてよ。うちの子ども、今日こんなんなんだけど」「え、そんなのけっこうあるよ」とか。それでちょっとストレス発散にもなるし。「仕事がストレス発散になる」そんな仕事は最高だと思う。

だって、普通仕事ってストレスじゃん、よっぽど好きなことしなければ。ってことは、家庭でもストレス、仕事に行ってもストレス、「じゃあそんなお母さんたちのストレス発散の場ってどこなの」ってなっちゃうから。かといって子育て中のお母さんは、お父さんとかみたいにねぇ、夜飲んでガーって騒げるわけじゃないし、子供が小っちゃければ外に出るのもなんか厳しいから。ちょっとでも子育て中のお母さんの、気持ちにゆとりができるような場になればいいなと思うし、そういうサポートもできればいいなと思います。

 

 

着物は扱っていて、飽きない

黒の留袖を使った着物

[黒の留袖を使った洋服。柄の取り方や、紋の位置の工夫、そして生地感の違いで、着物はさまざまな表情を見せる。]

一枚の着物があって、もしこれがお母さんの着物だったとします、でお姉ちゃんは「この着物がすごく大事」と思ってても、同じ姉妹でもね、妹さんは何てことないんですよね。だから「着物って、皆が皆同じ思いで大事にしてるんじゃないんだなぁ」って思って。もしかしたらそのお姉ちゃんのほうは、その着物を着てるお母さんを覚えてる。でも妹さんのほうはもしかしたらその姿を見てないから別にその着物にそんなに思い入れがないんだなぁ、とか。着物に対する思いが一人ひとり違う。だから、はまればはまるほど面白い。

あとは、着物の顔が変わる。同じ着物なのに、柄の取り方でぜんぜん違うものみたいになる。柄の位置の違うところで、全然雰囲気も変わるし。私、鶴が大好きなんですけど、鶴の顔もぜーんぶ違うし、前使った着物なんて、鶴はいろんなところにいるのに、その中に悪人みたいな鶴がいる、顔が。絵のちょっとした描き方で、すごく性格の悪い顔の鶴になるんです。

たとえば黒の留袖だったら、これは結婚式の時に親が着る留袖の着物なんですけど。同じ黒が、一枚もないんです。全部色が違う。染だから。同じものがない。だから、留袖の洋服を作ってて、「あぁ、ここにちょっと黒が足りないから、じゃあこっちの黒に留袖の黒」って言っても全然違う。ただ一点もの、っていうだけじゃなくて、着物一枚一枚の顔も違うし、触り心地も違うし。

飽きない。着物を扱っていて全然飽きない。だんだんはまっていくし。シミがあったり、穴があったりするんですけど、「それはそれで着物の味」って思ってるんです。まぁね、それだけ着てる人もいるし、そのものの歴史があるから、まぁ穴があっても、シミがあっても、それはそれでしょうがないんじゃないかなって。だからそこをうまーく使えるようにしてますね。みんな大事にしてもらいたいって思いますね。

 


 

RINがクラウドファンディングに挑戦中です。ぜひご協力ください!(2016/7/2まで)

伝統をつなぐ”KIMONO Remake”の世界へ皆さまをご招待したい!

 

Rinがクラウドファンディングに挑戦中

 支援はこちらから

*クリックすると外部サイト(クラウドファンディングサイト"FAAVO")に移動します

  • このエントリーをはてなブックマークに追加