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【繋がる農業】「農業の固定概念を覆したい」と語る後藤さんの農業観とは?!

漠然と農業をしたいという思いを持ちながら、家が農家だったこともあり家の手伝いとして「農業」を捉えていたが、大学卒業後は2歳年下の弟と共に地元本宮市で仕事としての「農業」を始める。しかしながら始めた農業は困難の連続。何から何まで自分たちでしなければならないことに戸惑いばかり。このままではダメだと思い、飛び込み営業や商工会に参加したりなど様々な業種の人と出会うことで前へ前へと進んできた。

そんな後藤さんは、今回「はじめっぺふくしまファンド」に参加。耕作放棄地化防止のため、離農農家の農地を引き受けることを決意。資金を募集し、見事目標資金額を達成した。

 御稲プライマル株式会社・・・福島県本宮市にある農家でお米、野菜、農産物の生産・加工・販売を手掛ける。主要事業は米の生産であり、今回ファンドの資金で離農農家から耕作放棄地を引き受け、コシヒカリを生産する。

目次

"・エピソード1 自分で作ったものを見える形で届け、反応をもらい、責任をもってやるのが農業。

弟と始めた農業は困難の連続。重労働で辛い。さらに、何から何まで自分たちでしなければならないことに戸惑いばかり。積極的に様々な業種の人と出会うことで農業とは何かに気付いた。 

・エピソード2 お客さんと繋がって見えてきたこと。

直接お客さんとつながったことで自然と「お客様に食べやすい形で商品を提供する」ということに行きついた。 

・エピソード3 はじめっぺふくしまファンドについて

耕作放棄地を増やしたくない思いから集めたファンド。ファンドに参加した経緯と後藤さんの思い。

・エピソード4 あの震災から今、そして未来へ。

震災後、放射能関連の知識を調べ、どうしたら安心して食べてもらえるか悩んだ。

・エピソード5 皆さんへ、次の世代へと繋ぐ。

農業の問題は多々あるが、流通の方や各関係機関、消費者、全員の問題。全員で立ち向かわないといけない。

 

自分で作ったものを見える形で届け、反応をもらい、責任をもってやるのが農業。

御稲プライマル_後藤さん

漠然と農業をしたいと思い農業高校を卒業、東京の農業専門の大学に進学し、その後就農しました。2歳下の弟は、地元の農業短大で勉強をし、ちょうど同時期に農業の世界に入りました。当初は、親戚や知り合いにお米を販売するだけで、JAや市場出荷のみで、利益はほとんどなく、収入もほとんど小遣い程度しかないことに驚きました。

地元で就農をして、働いてみるとギャップがすごかったです。今まで家の仕事は手伝いでやっていましたが、何から何まで自分でやらなきゃいけないことに戸惑いました。市場出荷ではお金にならないし、忙しくて休みが取れない。でも身体はしんどい、見合わない。2人共いつ辞めてもおかしくない状況でした。

自分で値決めをできない現状では、ダメだと思い、何も分からず、飛び込み営業を始めました。そのため、旅館で一番忙しい時間、チェックアウトである10時に出向いてしまい注意を受けてしまったことも。またある営業先では、「農家なのに、なんで営業をしているんだ?」、「農家なんだから、営業などやらなくて良いんじゃないか」という話しがあり、「食べ物なんてどこから買っても一緒でしょ」という言葉に価値観の疑問を持ちました。

自分で作ったものを見える形で届け、反応をもらい、責任をもってやるのが農業だろうということをその時に思いました。

また、困難だらけでも、兄弟2人でやっていたからこそ乗り越えられたものがあると思います。2人で協力したり、アイディアを出しあったり、支え合いながらというのは大きいですね。

 

 

直接お客さんと繋がって見えてきたこと。

御稲プライマル後藤さんと生産している農産物

弟とふたりお互い、農業に夢を持ってやっています。負のイメージではないですが、固定概念を覆したいという想いが常にありました。(作るだけが農業じゃない)その想いが特化し、自然と加工部門や販売部門ができ、その後商談に参加したりイベントに出展したりと活動の幅が広がっていきました。

加工は、付加価値をつけるためだけではありません。お客様に食べやすい形で商品を提供するというのも農業の1つの仕事だと思っています。ひとつひとつにステップやストーリーがあり、それを分かり易く伝えられるのが加工であると思います。

本格的に加工をスタートしたのは平成16年くらいだったと思います。目の前にある素材をどうやってお客さんに楽しんでもらおうか、理解してもらうかを考えました。例えば、ヤーコン。食べ方が分からないというご意見があり、素材そのものではほとんど売れません。であれば加工しようということになり、「ヤーコンの梅酢漬け」という商品が生まれました。今ではヤーコンを加工用として栽培しています。

イベントなどに参加すると直にお客様の声を聴け反応を見られる。これが一番の収穫です。商談会・展示会・イベントなどで新たな取引が生まれることもあります。どこかに出向くことで何かしら繋がりが増えていきます。

結果、自分発信で行動を起こし、前に進もうとするようになりました。何かをしようと思ってではありませんが、どこでどういう繋がりが生まれるかということに面白みを感じています。

例えば、全く違う業界で想像もつかない仕事をしている人との出会いが刺激になります。最近、お付き合いあるのが広告代理店でしょうか。パッケージの打ち合わせをすることも多く、デザインだけでなくセールスプロモーションの相談にものってくれます。他にも、コンサルティング業の方や中小企業診断士さんなど様々な業種の方との繋がりから学ぶことは多いですね。

 

 

はじめっぺふくしまファンドについて

ファンドを集める経緯は、耕作放棄地を増やしたくない思いからですね。米価が下落した事も要因です。米は日本人の生活に根ざしています。米作りは崇高なものですね。米を作るってすごいことです。すごいことをやっているんだと思っています。買う方は、価格が高い安いとか、有名な地域のブランドとかで購入判断をするしかありません。一部の情報しか提供されていませんから。新潟県産ならとりあえず良いんじゃないか、安い方が良いんじゃないか。こんな簡単に商品価値は、決められないはずですよね。

お金を出せば買えるのではなく、農家を支えるじゃないですけど、買うということは、農業や環境保全の維持に参画している一員なんだと思って欲しいです。そういう発信をし、広く周知したいと思っています。

出資者の多くは、同年代である30代の方たちでした。他県の方が多いですかね。私たちの想いが伝わったのだと感じました。ファンドが面白いのは、イベントがあったり、販売のお手伝いに来たり、積極的に商品の応援をしてもらえることです。ファンドが終わってもお客様として繋がれるというのは魅力のひとつだと思います。

 

 

あの震災から今、そして未来へ。

正直なところ震災後、個人贈答用の売上が今も戻っていません。

県外に送る贈答用がほとんどなくなってしまったことは大きいですね。地元で普段お付き合いのある方には安全性に関する説明ができますが、その先というと、説明は無理ですものね。送る方も心配だし、受け取る側も心配。そうすると、わざわざ福島のお米ではなく、別のものを送るようになっているのではと思います。既存取引先を中心に説明のできる範囲では、説明させていただいたり、震災後に始まった新たな取引など、減少額は最低限に抑えられたと思います。安全性を理解していただいて、毎年のように使っていただいています。

震災当初は、放射能関連の基礎や情報を調べました。そういった根拠を踏まえた上で、丁寧に説明し、「そこまで揃っているなら大丈夫だね」と信頼していただいたこと、応援買いが盛んであった当初、「福島県だから買うんじゃないと、後藤さんのお米だから買いたい」と言ってもらえことは自信になっています。ただ、個々の説明に臨めないのがもどかしいですね。そういう意味で、視察で来られる方との時間はすごく貴重ですから、そこは丁寧に説明をしています。

先月も、仙台のイベントに出展しました。東北六県の美味しいものが集まったが、福島県はうちだけで、寂しい思いをしました。福島県の農家自体が、トラウマになっているようですね。大丈夫なの?とまた言われるんじゃないかと心折れそうになっているというのもわかります。

やはり、資料や根拠がないと説明できないですね。

まず、ひと通り見ていただいて、納得するかはお客様の自由です。あらゆる情報を得た上で、買う・買わないの判断ができる。そこまでいけるかなんですよね。それでもダメ方はダメだと思います。福島県だから無条件に外そうというのはもったいないですから。 

それに、不確かなのは、放射能だけでなく農薬や添加物などもあると思うが、報道の一部しか見ていないイメージの怖さがあると思う。報道の方にも言ったが、去年も基準値超えは2本だけであるが、実はその2本を見つけたことの方がすごい。福島県だから見つけられるんですよ。正しく理解してもらうのがすごく大変ですね。

 

 

皆さんへ、次の世代へと繋ぐ。

農家の担い手不足や若手育成などの取り組みについては、若い人材を入れて、ここで勉強をして独立してもらい農場を貸したり、お互いに販売強化したりというのを少しずつやっていければと思っています。

農業体験も行っています。他県の方もけっこういます。今やらなきゃいけないのは、農業の魅力や面白さを高め、それらを伝える。きっかけは何でも良いと思います。コンバインや田植機を見て、かっこいいな、あれ乗ってみたいとか、そういうのでも何でも良いんですよ。そこに興味を持って参入してくれる方が増えてくれればと思います。

農業を体験する上で、楽しいだけではダメだと思っています。厳しいところや、面倒な所も伝えたいですね。どの職業でもそうじゃないですか、大変なことや面倒なことがありますから。

農業の問題は多々あるが、流通の方や各関係機関、消費者、全員の問題だと私は考えています。全員で立ち向かわないといけない。農業分野だけで取り組んでは解決はできませんよね。みんなの共通の問題なんだというところから始めると、解決の糸口が拡がっていくと思います。

私たちは先祖代々、農業を営んできた。ずっとこの地でやってきたというのが、私たちの強みです。今後も伝統を守りつつ、お米の新しい価値を提案します。伝統と進化、二つを並行して進めます。

 

耕作放棄地については、とにかくどうにかしなければと思います。ファンド募集終了後も、他の農家さんから米を創ってくれないかという依頼がありました。4軒の農家さんが今年までは作っていたが、もうできなくなったなど、そういうのがあるので、完全に荒れ地は増えていくと思います。米作りを行った場合、10アールあたり、1トンのCo2削減という効果もあるので、環境面からも維持するべきだと思います。

企業誘致で本宮市では農地が減っています。ある意味それも活性化と一つとしては良いでしょう。だが、本来農地として価値があるところは作るべきなんですよ。そうしないと山間部しか残らなくなります。地域の価値・資源、発展・活性、バランスが難しいですよね。

参考リンク

御稲プライマル

【募集終了】福島本宮コシヒカリファンド2015(はじめっぺふくしまファンド)

 

ふくしまはじめっぺ直売所

特別栽培米コシヒカリ  ごとうさんちの三五八

 

※はじめっぺ直売所では季節に応じて様々な福島県産品を販売しております。

 

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