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埼玉の中学生が作った!学校でたまたま見つけたデータから始まった埼玉県×福島県のコラボどら焼き

中学校の総合学習の時間「スイーツプロジェクト」の中で、架空の和菓子会社、菓子楽(かしがく)研究所を設立。福島県産のりんごと埼玉県産の抹茶を使ったどら焼き「彩の活緑(さいのかつりょく)」を考案。学内コンペの中で勝ち抜き、実際に商品化までこぎつけ、地元埼玉県川口市の和菓子店で販売されています。

(左から菓子楽研究所社長:窪田一磨、デザイン:松木あみ、商品開発:佐藤光杏、広報:吉中大貴)

目次

・エピソード1 たまたま見つけたデータから生まれた「どら焼き」

仲町中学校では毎年、3年生の総合学習で「スイーツプロジェクト」を行っている。ある日、科学部に所属する社長:窪田くんは科学部のPCから先輩の考えたスイーツを知った。

・エピソード2 スイーツ作りから震災を考えるキッカッケに

 先輩のスイーツをきっかけに、後を受け継ぐような形で福島産の材料を使ったお菓子作りを計画する菓子楽研究所のメンバー。

・エピソード3 先輩との「絆」、復興としての「絆」。

菓子楽研究所のメンバーは、それぞれの思いを中学生なりに伝えるのがこのどら焼き「彩の活緑」だと話す。

 ・エピソード4 商品化を進めた、和菓子店「中ばし」

 商品開発に協力した和菓子店「中ばし」にも話を伺った。

 

たまたま見つけたデータから生まれた「どら焼き」

菓子楽研究所が考案したどら焼き「彩の活緑」を食べる4人。

――仲町中学校の総合学習「スイーツプロジェクト」は、4人1組でバーチャルな会社を立ち上げ、社長、広報、商品開発、デザインとそれぞれが役割を持つ。食材は何を使うか、だれをターゲットにするか、商品のウリは何か、商品のストーリー等を考え、協力して商品を作っていく。実際に社長やコピーライター、工業デザイナー、栄養士さんを招き、勉強するというユニークな学習となっており、学園祭のような楽しげな雰囲気で作業が進められている。 

僕(社長:窪田)が、科学部に所属していたこともあり、科学部のPCを使うことがよくありました。スイーツのアイディアを探していた時に、たまたまPCで去年の先輩が考えたスイーツのアイディアを見つけました。その時に「コレだ! 」と思いました。データは本当に、たまたま見つけたものだったんです!

去年の先輩が考えたスイーツのアイディアは、「福島県産の米粉を使う」というものでした。先輩の渡辺君のおじいちゃんが福島に住んでいて、そのおじいさんの知り合いの農家の人たちが「震災により農産物が売れなくなった」と、おじいさんによく話をされていたようです。その話をおじいちゃんから聞いた渡辺君はおじいさんの住んでいる福島県の役に立ちたいという思いから福島県産の米粉を使ったスイーツを考えたそうです。「スイーツプロジェクト」は、学内コンペで優勝したスイーツしか実際に商品化されません。残念ながら、先輩の考えたスイーツは優勝することができず商品化されませんでした。学内コンペでは、アイディアはもちろん重要ですが、実際に商品化したときに売れるかどうかが審査基準なので…。

でもそのデータを見つけた時、自分たちがこの思いを受け継ごうと思い、「スイーツプロジェクト」で「福島県産のりんごを使おう!」となりました。

 

スイーツ作りから震災を考えるキッカッケに

どら焼きの皮は埼玉県産の抹茶を練り込んだもので、具にはつぶあんと福島県産のりんごが。つぶあんの甘味に対しりんご酸味が爽やかさを醸し出す美味しさ。

菓子楽研究所の商品開発のテーマは、最初は「復興」ではなく、「栄養」を考えたものでした。当初、「働きすぎた社会人を癒す」というコンセプトだったので、どら焼きに栄養のある「ほうれん草と抹茶を入れよう!」と考えていました。

先輩の考えたのスイーツを知って、震災のことを再び考えるきっかけになりました。自分たちは普通に生活をしているけれど、まだ被害・復興が思うように進んでいないこともニュースなどを見て知っていました。

先輩の考えを知って、福島県産のものを使うということは、良いことだと思いました。何か福島県の人たちのお手伝いのようなことが出来たらという考えになり、先輩のアイディアを受け継ぎました。 

そして、「復興」と「栄養」を考えたものに変更しようということなりました。

しかし商品化を進めていくうちに、ほうれん草は万人受けしないということが分かり、抹茶だけにするということになり、今のどら焼きが完成しました。

学内コンペで優勝したのは別の会社が作った大福「幸福」でした。残念ながら、「彩の活緑」は優勝できませんでした。これで商品化の夢はなくなったと思っていました。

その後、優勝した大福の商品化を進めてくれていた和菓子屋さんが「準優勝も同じ和菓子だし面白いから商品化しよう!」と、商品化されることになりました。

実際に商品化するときには、和菓子店だけでなく、先輩の渡辺君のご家族のみなさんにも協力してもらいました。渡辺君のおじいさんの知り合いのりんご農家さんを紹介してもらい、りんごを2箱送ってもらいました。

 

先輩との「絆」、復興としての福島の人たちとの「絆」。

改めて商品化したものを食べると、いい感じに出来ていてよかったです。商品名の「彩の活緑」の由来は、先ほどいったように現代人に活力を与えられたらということと、生地に抹茶が練り込まれていて、皮が緑色だからです。彩の国(埼玉県)の彩と活力と緑をかけて、「活緑」という風にしました。

できれば多くの人に、食べて欲しいと思っています。使っているりんごはモニタリング検査済みのものですし、福島県産のもの、まだ福島のモノに対してためらいがある人は安心して食べてほしいです。

このどら焼き「彩の活緑」のパッケージには、大きく絆という文字が書いてあります。この絆の意味は、福島の人たちとの「絆」と、先輩との「絆」の2つの意味を持っています。今回先輩との繋がりがなければ、このどら焼きを作ろうともならなかったし、福島県産のりんごも手に入らなかったかもしれません。そういった意味でも、先輩との「絆」という意味を込められています。

 

――菓子楽研究所のメンバーからのコメント。

社長:中学生だけれども、中学生なりに、いろいろな人に自分たちのどら焼きを通じて「復興」や「福島」について考えてもらうキッカケになればと思います。

広報:お買物ついでというか、何かのついででも構わないので、気軽にこのどら焼きを買ってもらえたらと思います。日常の中で、明るい気持ちで購入してもらえればと思います。

商品開発:震災直後は、みんな福島に目を向けていたと思いますが、最近はちょっとずつ風化しているような気がします…。でも、ちょうどその時に社長が先輩のデータを見つけ、福島のことを話題にあげてくれたのが、再び震災を考えるきっかけになりました。商品を考えていた最初は、「復興」ということを考えていなかったのでそのアイディアを持ってきた社長に対してすごいな、と思いました。このどら焼きを通じて、復興になにか繋がればと思います。

デザイン:1人1人が、福島に対して温かい気持ちをもってくれればと思います。震災前のようにふつうに接することが大事なんじゃないかと思いました。今回、福島県産のりんごを使うにあたって、自身の意識がかなり変わったと思います。改めて福島についての意識も強めることができたので、このスイーツプロジェクトは良い機会でした。

 

商品化を進めた、和菓子店「中ばし」

 

――実際に商品開発に協力した、和菓子店「中ばし」にもお話を伺った。こちらの和菓子店は、テレビで紹介されるなど有名な店です。 

生徒たち、菓子楽研究所のメンバーの話を聞いてすごく頑張っていると思いました。実際に商品化する際、商売をするという要素も入ってきます。コストを考えなければならないですよね。コストがかかりすぎれば商売にもならないので、だいたいこれ位なら大丈夫かな、という価格を設定しました。

購入していったお客さんの反応は、上々です。福島を応援したいというお客さんもいましたし、どんな味か面白そうということで買って下さったお客さんもいました。

はじめは埼玉県産の抹茶を練り込んだ皮を焼き上げるのが難しく、生地になかなか火が通らず、すぐに焦げてしまいました。火を弱めてじっくりと焼くという焼き方を工夫したところ、いい感じに生地が膨らみ、おいしく仕上がっています。

協力しようと思ったのは、2年前から教頭先生とスイーツプロジェクトの商品化のお手伝いをしてきました。優勝した和菓子(大福)の商品化を相談されたとき準優勝も和菓子だと聞いて驚きました。今の生徒は洋菓子が好きなのかと思っていたら優勝も準優勝も和菓子なので。詳しいお話を聞くと福島のりんごを使ったどら焼きで、福島の人たちのお役に立ちたいという生徒たちの思いが伝わり、私も福島の人たちに協力できればと思い「やってみましょう!」と即決しました。この総合学習は実際に自分たちで会社を設立するというもので、将来とてもいい経験になると思いました。

 

菓子楽研究所のどら焼きは、埼玉県川口市の以下の和菓子店で先週から販売が開始されています!
・「中ばし」埼玉県川口市桜町2-5-16
・「村田屋」埼玉県川口市西川口6-8-33

 

参考リンク

埼玉県川口市立仲町中学校ホームページ

 

※はじめっぺ直売所では季節に応じて様々な福島県産品を販売しております。

 

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